20分だったことがある……
私が、いままでに経験したいちばん短かい火葬時間は20分です。
――それは、とある都内の民間火葬場、午後の遅い時間帯に到着すると、火葬炉を使うのは私たち一行だけだった。
閑散とした場内で、故人と親族が「最期のお別れ」を済ませると、火葬炉に棺を納め、遺族、親族を休憩室に案内する。
テーブル席に着き、それぞれが注文した飲み物に口をつけたな……と思った瞬間、「〇〇さん、収骨です」と女性職員に声をかけられた。
「えっ、ずいぶん早いな!」と驚いて、腕時計を見るとまだ20分程しかたっていない。
葬家の皆さまは、注文したばかりのコーヒーを飲み終えてもいないし、いくらなんでも早すぎるので時間を調整、引き延ばし、40分程たったところで収骨の案内をしました。
私はその時、「20分か、やればできるもんなんだな」と思ったのですが、休憩室もタダというわけではない、民間なのでホテル並みのの料金を取っているのだから、10数分で退出というのはあまりにも……。
そもそも、そんなに短時間で火葬ができるのなら「移動などせずに、そのまま炉前に腰かけて待っていてもいいんじゃないか」とも思いました(笑)
余談ですが、最終回の火葬になると、火夫さんも決して手を抜いているというわけではない、おざなりにしているわけではないとは思うのですけど「早く、今日の仕事を終わらせて帰りたい」という気持ちになるのも人情ではないでしょうか。
火葬炉の種類
毎日、あちこちの火葬場へ行っていますが、それぞれに時間や手順、炉から出てきた骨の状態が違います……、調べてみると炉の方式には大きく分けて2種類あるということがわかりました。
ロストル(火格子式) | 台車式 | |
---|---|---|
○メリットと されていること |
金属の格子の上に棺を載せるので、下からも火が回り火葬の時間が短い、30~50分 | 台の上に棺を載せて火葬する。骨格が崩れにくい |
×デメリットと されていること |
格子の下に骨が落ちる、骨格が崩れて細かくなる | ロストル式よりも時間がかかる、およそ火葬1時間+冷却10分 |
火葬の方式によって時間は変わります。同じ方式でも新しい炉の方がもちろんのこと性能が良いです、煙も臭いも少ないです。
このような、たとえをすると顰蹙を買うかもしれないですが、簡単に言えば「網焼き」か「鉄板焼き」の違いのようなものです。わかりやすく言うとすればです。
ロストル式は骨が鉄格子の下に落ちる、細かく砕けた状態になる、しかし台の上で焼けば骨の形が比較的きれいに残るから良いという説がありますが……。
以前に東京郊外の設備の旧い火葬場で、まるで学校の理科の実験室にある骨格の標本のような「姿焼き」の状態で出てきたものを見たことがありますが、いまの時代、それは遺族、親族にあまり歓迎されないでしょう。
骨格が崩れ、細かく砕けて、そのまま手を加えずに骨容器に納められるような状態で出てくる方が望ましいのではないかと思います。
頭蓋骨がそのままの形で出てきたらショック!を感じる方が多数でしょうから。
火葬中に食事をするのか、しないのか?
東京都にある火葬場を大きく二つに分けることができます。
火葬時間が1時間以上 | 火葬中に会食をする/できる |
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火葬時間が30分~1時間以内 | 会食をしない/できない、待ち合わせるだけ |
すなわち、
- 火葬後、収骨をしてから会食(精進落とし)
- 火葬中に会食(精進落とし)をしてしまう
この二通りの進行、スケジュールがあります。
本来の初七日、精進落としは四十九日過ぎてから
本来の仏教の考え方からすると精進落としが葬儀と同日にはならないのですが、
本来は…… | |
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初七日法要 | 亡くなってから七日目に行う |
精進落とし | 四十九日の忌明けに精進料理から通常の食事に戻すことを言う |
現在では、
現在では…… | |
---|---|
初七日法要 | 葬儀式の中に含めてしまうか、収骨後に行う |
精進落とし | 葬儀式の後、火葬中か収骨後に会食をする |
↑このような順序が一般的となっています。
そもそも現代では式場や火葬炉の予約が取れずに死亡してから八日も九日も過ぎてから火葬をすることもあるので、初七日の意味自体が崩れていると思いますが、葬儀式の中に含めてしまうパターンが一番多くなっています。
もちろん「初七日は火葬後に」ということに拘っている僧侶の方も少なくはないのですが、コロナ渦の影響もあり葬儀のスケジュールは短縮の方向に向かっています。
東京の民間斎場は火葬後に「精進落とし」
東京の民間経営の斎場、東京博善、多磨葬祭場/日華斎場、戸田葬祭場は、火葬中にいわゆる「精進落とし」の会食はしません。火葬時間が短いからできないとも言えます。
公営の施設臨海斎場、府中の森市民聖苑やその他、多数では、火葬を待っている間に会食(精進落とし)をすることを前提としています。
例外として瑞江葬儀所は東京都営なのですが、収骨後に会食をさせる葬儀社が一般的です。
- 開始火葬
会食「精進落とし」 - 1時間数十分後収骨
- 散会・帰宅
- 開始火葬
休憩室で待つ。酒、おつまみ、ソフトドリンク、菓子がある。
- 30分~60分収骨
- (移動)
(火葬場と式場が別、離れている場合)
- 会食「精進落とし」
- ラベル散会・帰宅
ちなみに神奈川、千葉、埼玉は公営が多いのでほとんど火葬中に会食をします。
火葬中に会食(精進落とし)をしない火葬場 |
火葬時間はおおむね40分~60分。収骨が終わってから会食をすることが前提です。 火葬中はアルコール、ソフトドリンク、おつまみ、菓子を注文できます。 東京博善(民間事業者) 町屋、四ツ木、お花茶屋会館、落合、堀ノ内、桐ケ谷、代々幡の6斎場。 火葬場+葬儀式場の複合施設。 多磨葬祭場(火葬炉)/日華斎場(式場)(民間事業者) 火葬場+葬儀式場の複合施設。 戸田葬祭場(民間事業者) 火葬場+葬儀式場の複合施設。 火葬時間は当日の混み具合、前の火葬の遅れの影響で長くなることもあります。 民間斎場は公営と比較して時間に幅があるというか、融通がきくというべきか、臨機応変に対応しているように思えます。 |
会食もできるが…… |
瑞江葬儀所 唯一の都営火葬場、通夜・葬儀のできる式場はないのでご注意を! 火葬中に待合所で会食もできるが、葬儀を行った式場に戻ってからという場合が多いです。 |
火葬中に会食(精進落とし)をする/できる火葬場 |
多くの公営斎場の火葬時間は1時間と数十分、火葬時間と冷却時間を含めて70分~90分が目安。 火葬場に霊柩車が到着→火葬→収骨→出発まで、トータル2時間を目安に考えておけば良いと思います。 臨海斎場(港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区の共同事業) 火葬場+葬儀式場の複合施設。 立川聖苑(立川市、昭島市、国立市の3市で運営・管理) 葬儀式場はありません、火葬炉のみ。隣に葬儀式場の立川市斎場があります。 府中の森市民聖苑(府中市民専用の施設) 火葬場+葬儀式場の複合施設。祭壇が常設されています。 瑞穂斎場(瑞穂町・福生市・羽村市・入間市・武蔵村山市が運営・管理) 火葬場+葬儀式場の複合施設。祭壇が常設されています。 ひので斎場(あきる野市・日の出町・檜原村・奥多摩町が運営・管理) 火葬場+葬儀式場の複合施設。 南多摩斎場(八王子市・町田市・多摩市・稲城市・日野市、5市で運営・管理) 火葬場+葬儀式場の複合施設。常設の祭壇は×無し。 青梅市民斎場・火葬場 火葬場+葬儀式場の複合施設。祭壇が常設されています。 日野市営火葬場 火葬場のみ。南多摩火葬場を利用する日野市民が多いです。売店や待合ロビーもなく、建物の造作、設備が旧いので人気がないと思われます。そもそも受け入れ件数自体が1日5件と少ないです(南多摩斎場は27件)。 |
伊豆諸島には下記の火葬場があります。
ちなみに大島町火葬場(公営)では、火葬から収骨までにかかる時間が約180分程度だそうですが、私は島部での葬儀の経験がありません。詳しくは現地で営業している葬儀社に問い合わせてみてはいかでしょうか。
葬儀社の担当者が取り計らってくれる
火葬の時間は炉の形式、施設の新旧によって違いますが、短ければ良いというわけでもなく、火葬中に会食をするのであれば1時間以上は必要となるでしょう。
東京は民間の火葬場が多いのですが、神奈川、千葉、埼玉は公営が多いのでほとんど火葬中に会食をします。
いずれにせよ、葬儀社の担当者がうまく取り計らってくれます。
参考にしてください、では。
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