いまではエスティマが霊柩車

エスティマ 未分類

かつて霊柩車は宮型だった

宮型霊柩車
宮型霊柩車

平成の中頃まで霊柩車と言えば「宮型」。自動車を改造して輿こしを乗せ、その中に遺体を入れて運ぶ。

かつては遺体を入れたを人がかついで墓地まで運んだそうだ。身分の高い人だけが棺に横になったまま納められたそうだが(寝棺)、日本も豊かになり一般庶民も豪華絢爛ごうかけんらん輿こしに入れられ、自動車で火葬場へ出棺するようになった。

東京を代表する霊柩自動車会社に東礼自動車がある。現在2種類のランクの宮型霊柩車が用意されている。

白木車リンカーンキャディラックと並ぶアメリカを代表する高級車を改造し、白木製の輿を乗せたもの
指定車クラウンエステートご存知、トヨタの乗用車を改造し、仏壇調の色をした輿を乗せてある

上記の2種類がラインナップされている(令和3年3月現在)。もちろんリンカーンの方が料金が高く、業界で慣例となっている心付けも、たとえば指定車が5,000円、白木車が10,000円などと区別をつけている葬儀社が多い。(金額は厳密に決まっているわけではないので葬儀社に多少の変化はあります)

東礼自動車に依頼せず、自前の霊柩車を使う葬儀社もあるが、それも宮型から→洋型へと変化を遂げていった。

そして宮型は消えた……

周辺の住民への配慮、取り決めから宮型霊柩車が出入りできない、花環も立てられないという施設が増えた。

また客の好みが変わり、白木祭壇よりも生花祭壇、霊柩車も宮型より洋型が好まれるようになった。

私も「令和になってから宮型の霊柩車を見たことがあるか?」と問われれば「駐車場で一台くらいは見かけたかもしれないが……走っている姿を見た記憶はないな……」と答えるくらいに宮型は減った、いや無くなったと言っても言い過ぎではないだろう。

しかし、宮型霊柩車が無くなったというだけではない、現在は霊柩車自体が使われることが少なくなったと言える状況だ。

「霊柩車を目にした時は、親指を隠せ、親の死に目に会えなくなるぞ」などと言われたものでしたが、洋型の霊柩車は注意していないと、それとは気づかずに通り過ぎてしまう人も多いと思います。
とにかく、宮型の霊柩車のインパクトは強いです。昨今は、近所に知られずに葬儀を済ませたいという家庭も多いのでそれも宮型が減った理由の一つです。

いまでは搬送車で出棺

一般の方々には、にわかに区別はつかないかも知れないが、霊柩車とはまた別に、病院から自宅や式場へ遺体を運ぶための搬送車というものがある。
棺を載せることもできるが遺体をそのままストレッチャー(担架)に乗せて運ぶことを前提としている車両だ。

洋型霊柩車

霊柩車(洋型)

棺を火葬場へ運ぶための車両、本来の霊柩車
出典:東礼自動車(株)

東礼自動車 エスティマ

搬送車

病院から→自宅、または→式場へと遺体を搬送するための車両
出典:東礼自動車(株)

いまは葬儀自体をしない直送が増えた。しかも近所に葬儀を出したということを知られたくないので葬儀社に普段着に近い服装を要求する顧客も珍しくない。

それならわざわざ金額の張る、装飾された霊柩車を使わずに搬送車としてラインアップされている車両(エスティマ)を霊柩車として使うパターンが増えるのは自然なことだろう。

しかして東京の霊柩車はトヨタのエスティマになったということだ。

2019年、トヨタはエスティマの生産を中止したという。いままでのユーザーはアルファードやベルファイアに乗り換えるのだろうか。そして東礼自動車の搬送車もアルファードに置き換えられていくのか?

霊柩車には誰が乗る?

霊柩車には誰が乗るのだろうか?出棺する場合の段取りを考える際に重要なことだが、まず、車種によて乗車できる人数が違うということを知らなければならない。

  • 運転手+1名
  • 運転手+2名
  • 運転手+3名(このパターンは少ない)

実際は葬儀社の担当者が乗車の計画を立ててくれるので任せきりにしてもらっても良いことだが、よくあるパターンとしては以下のようなものだ。

運転手以外に1名乗車できる場合

運転席運転手
助手席喪主(位牌を持つ)

運転手の隣、助手席には位牌を手にした喪主が乗るのが常識。

運転手以外に2名乗車できる場合

運転席運転手
助手席喪主(位牌を持つ)
後部座席喪主に準ずる人(遺影写真を持つ)

後部座席に乗車できるのなら喪主に準ずる人、喪主が故人の連れ合いなら息子、娘などが乗る。遺影写真を抱えていく。

かつて、東京の葬儀社では霊柩車の助手席に担当者が乗ることが普通でした。それが、式場の施行は担当者、火葬場は案内専門の係と、それぞれを分業させる葬儀社が増えてくるにつれ、霊柩車の助手席に喪主を乗せることが増えていったのです。

出棺時、クルマの順番

火葬場へ出発する際には霊柩車、そして僧侶の乗った自動車、自家用車、バスなどと葬儀社のスタッフがてきぱきと指示、案内してくれるだろう。任せてしまってよいことだ。
しかし、参考までに基本的な順番を記しておくと、

霊柩車どんなことがあっても先頭は故人を乗せた霊柩車、それは不動だろう。
僧侶の自動車・僧侶の自家用車かもしれないし、または葬儀社が手配したハイヤーに乗ることもある。
・場合によってはバスに乗る場合もあるが、霊柩車の次は僧侶の車の順が基本。
自家用車・台数はその時の事情による。
・バスに乗り切れてしまうのなら自家用車を出す必要はない。
バス・葬儀の規模が小さくなっていく中で、だんだんと使われなくなっている。
・自家用車、タクシーだけで乗り切れてしまうのなら必要がなくなる。

火葬場に向かう際は、このように霊柩車が先導するのだが、途中、信号の変わり目で車列が途切れてしまっても運転手は気を利かして待っていてくれる。
また「時間調整」のために故意に遠回りをする場合もあるが、すべて霊柩車の運転手に従って行けば問題はない。

これからどうなる?

平均寿命が延び、葬儀の参列者、会葬者が少なくなる中で、大きな車体、装備の豪華な霊柩車、そしてバスも需要が減っていくばかりだろう。

自社で霊柩車を所有している業者は別にして、搬送車を出棺時の霊柩車として使うことが当たり前となるのではないか。

今後、自動運転の技術が進み普及するにつれて霊柩車はどうなるのか。社葬など大規模な葬儀、格式のある式典は別にして自動運転の霊柩車が標準となる日も近いかもしれない。

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