「イエス・キリストがクリスマスツリーの飾り方を指示したわけではないように、
お釈迦様が焼香の作法を決めたなんてことは聞いたことがない」
「仏教の教え、思想と焼香の回数に何の?関係があるの?」
などと言ってしまったら、身も蓋もない話になってしまうので、日本の仏教の各宗派、それぞれの考え方、しきたりを探ってみようと思います。
浄土真宗以外は定説がない
インターネットで葬儀について検索をすると、まず目につくことが多いであろうネット系葬儀仲介業者はどのように説明しているのでしょうか。
各社のサイトを見ると、浄土真宗以外は、バラバラ、まちまちであるということがわかりました。(小さなお葬式は本願寺派と大谷派をひとくくりにしています)
(ちなみに押し頂くとは、抹香をつまんだ手をうやうやしく目の上、額のあたりの高さまで持ち上げ、ささげる動作のことを言います)
イオンのお葬式 | ちいさなお葬式 | よりそうのお葬式 | 終活ねっと | いい葬儀 | |
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天台宗 | 特に定めがない | 定めは特になし、押し頂くどうかも自由 | 押し頂き、3回 | 決まりなし | 一般的には1回または3回の場合が多いようだ |
真言宗 | 通常3回。 | 押し頂き、3回 | 押し頂き、3回 | 3回 | 3回 |
浄土宗 | 特に定めがない。 | 定めは特になし。 | やや押し頂き、1回 | 1回~3回 | 地方やお寺によるが、特にこだわらないとしているところが多いようだ |
浄土真宗 本願寺派 |
1回 | 押し頂かず、1回 | 押し頂かず、1回 | 1回 | 押し頂かず、1回 |
浄土真宗 大谷派 |
2回 | 押し頂かず、2回 | 2回 | 押し頂かず、2回 | |
曹洞宗 | 回数にこだわらない。 | 1回目は押し頂き、2回目は押し頂かずに2回 | 2回が一般的、1回でも問題なし | 2回 | 2回 |
臨済宗 | 回数にこだわらない。 | 押し頂き、1回 ※押し頂かなくても良い | 押し頂き、1回 | 1回 | 押し頂き1回とする説もある |
日蓮宗 | 通常3回 | 押し頂き、1回(または3回) | 押し頂き1~3回、宗内宗派によって違いあり | 1回 | 導師(僧侶)は3回、一般参列者は1回 |
人の身体は死亡するとすぐに変化、腐敗します。電気も冷蔵庫もない時代、インドでは殺菌や虫よけ、臭いを消す……などのために香を用いていました。
それに焼香の回数が二回であろうと三回であろうと、それはインドの時代の仏陀の思想、教えとは関係がないことです。
クリスマス・ツリーの飾り方と同じように絶対的な決まりはないのです。
ただし、日本仏教界の異端(私はそう思う)浄土真宗だけは別です。真宗は、遺体の上に守り刀を置かない、お清めの塩を使わないなど、特殊な決まりごとが多い、日本の仏教の中でも独自の道、発展を遂げたように思います。
各宗派、公式サイトの見解
参考までに各公式サイトの見解も引用しておきます。
浄土宗 公式サイトより
お焼香の回数は厳密に決まっているものではなく、たとえば一回であれば、一心に仏さまや故人へ自分のまごころを伝える、三回であれば、仏(ぶつ)〈お釈迦さま・阿弥陀さまなどの仏さま〉・法(ぽう)〈仏さまの説かれた教え〉・僧(そう)〈仏さまを敬い、その教えに従う人々〉の三宝(さんぼう)に供養する、また貪(とん)〈むさぼり〉・瞋(じん)〈いかり〉・痴(ち)〈おろかさ〉という三つの煩悩〈三毒(さんどく)〉を焼き払って清浄(しょうじょう)にする、などの意味が込められているとされます。
浄土宗【公式サイト】焼香の仕方 より引用
浄土宗の公式サイトには回数は厳密に決まっているものではないとあります。
日蓮宗 ポータルサイトより
回数に関しては、宗派や地方によって様々で一概には言えませんが、日蓮宗では導師は3回、一般参列者は1回とされています。
一番大事なことは、いったい何に対して「香」を捧げるのかを考え、心をこめることでしょう。
また、周りの状況を判断し、大勢の場合は一回(一本)にするのが常識です。
日蓮宗ポータルサイトお焼香について より引用
焼香は1回で良いようです。
曹洞宗 公式サイトより
曹洞宗の教えや教義については、一定の見解を申し上げることができますが、仏事の執り行われ方につきましては、それぞれの地域の慣習、伝統、しきたりによって、その方法も様ざまです。
各々の寺院や地域に代々受け継がれてきた風習があり、また、時代の状況に合わせてその方法を変えてきたということもあります。よって、全国的にみれば、あまりにも異なっていて、統一できる状況にないというのが実際のところです。
仏事を執り行う際のしきたり等については、お世話になっている菩提寺に直接お尋ねいただき、ご指示を受けられますようお願いいたします。
曹洞宗公式サイト・曹洞禅ネット FAQ 3-7 仏事の執り行われ方やしきたりについて より引用
この他の曹洞宗の寺院のサイトを探ると、1回目を主香、2回目を従香として2度焚くという意見が多く見られますね。
浄土真宗 本願寺派 公式サイトより
浄土真宗本願寺派では、「お香はおしいただかない」で「回数は一回」です。
①尊前(ご本尊の前)の二、三歩手前で、軽く頭を下げる
②進み寄って、まず香盒の蓋を取ってその縁にかけ、お香を一回つまんで、そのまま香炉に入れる。この場合、お香は額におしいただかない。また、お香をつまむ前に合掌礼拝する必要はない。
③香盒の蓋をして、合掌礼拝する。
④礼拝が終われば、二、三歩後退して軽く頭を下げる。
以上が基本です。
浄土真宗 本願寺派サイト より引用
真宗大谷派 東本願寺 公式サイトより
抹香を二回香炉に入れるということです。
その他の宗派については、ネット、書籍等で公式見解が見つかったら順次、紹介していきます。
焼香を間違えたら、やり直すべきか?
「あっ!間違えた」「隣の人と違うことをした」と思ってもやり直す必要はないです。
やり直すことは、かえって目立つし、おかしい。失敗したと感じても、そのまま平然と何食わぬ顔で自席に戻るか、退出してください。
よく見れば、皆さん、それぞれ少しずつ動作は違っている、全く揃うことはない。事前に練習をしているわけではないんですから。
それに会葬者の中には他宗派の方、それこそクリスチャンの人もいるかもしれない……、全員に焼香の作法を強制することはできない。
故人の家族にしてみれば、弔問に訪れていただいたということに感謝しかなく、焼香の細かな作法に着目し、どうこう思うこともないです。
まとめ
- 浄土真宗以外、定説はない。
- 定説がないのだから、そもそも「間違える」ことがないとも言える。
- 葬儀社のスタッフの案内に従い、直前の方々に合わせて行えばよい。
- 式場の大きさ、人数、他の人との距離、間隔、流れなどにより、必ずしもマナー本、マニュアルの通りにはいかない。
- いちいち手順を細かく気にして見ている人がいたら、それは専門家。多少の間違いが気にされることはない。
- あなたが仏教について深い知識を持ち、各宗派のマニアックな部分まで知っていたとしても、その場に合わせ、場の「空気」に従うべき。
ただし、あなたが喪主であるとか、弔辞を読むなど、注目をされる立場で焼香に臨むのであれば、事前に準備、練習をしておくことが望ましいでしょう。本番でまごつくことは良くないですから。
↓以下の動画などを参考にして励んでください。
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